アルゼンチンババア / よしもと ばなな
母を失い喪失する主人公、墓石職人として仕事に勤しむ父、そしてアルゼンチンババア。
2023/07/22/(土)
今日紹介する本は、
巷で「アルゼンチンビル」と呼ばれているビルに住む、「アルゼンチンババア」が登場する、ちょっと不思議で、暖かく、人の「生と死」をリアルにかんじることのできる物語でした
まず、タイトルにもある「アルゼンチンババア」という言葉に疑問を抱くことでしょう
アルゼンチンビルに住んでいるおばあさんが「アルゼンチンババア」と呼ばれている理由こそ、私がまず最初にこの物語に興味を抱いた瞬間です
「なぜならそのビルではその当時、ものすごい厚化粧と派手な服装で有名だったアルゼンチンババアがアルゼンチンタンゴとスペイン語を教えていたからだ。(本文より)」
至ってシンプルなのですが、私はアルゼンチンババアと呼ばれている理由が書かれたこの文章が面白くて、何度も読み返しました
うんうん
最もな理由である「アルゼンチンタンゴとスペイン語を教えていたからだ」が来る前に、もう、「アルゼンチンババア」が最初に来てしまっていることにツボです
あたかも「アルゼンチンババア」は当たり前に最初から備わっていたものみたいに、自然な扱いをされていることで開始早々私はババアの虜でした
そのような感じでユーモアを感じる文章が楽しめますが、時折感じる切なさもこの本の魅力です。
亡くなってしまった母親と住んでいた幼少期の住まいの思い出を、
永遠にないものだと考えた時の、儚く悲しい事実でありながらも愛おしく感じる描写に共感しました
私も今の住まいと幼少期の住まいが違います。
そしてたまにふと思い出す、あっちの家での記憶が、何とも言えない寂しさを感じさせてくる時があります....
何なんでしょう、一生戻ってこないようなあの感じ
建物での思い出って、結構ありますよね。悲しいので無くならないで欲しいです、母校とか。
そして何といっても、
この本に描かれている、奈良美智のイラストが物語ととてもよく合います
主人公の絵日記を見ているかのような感覚で楽しめます。
とても煌びやかな装丁に、素敵な物語とイラストという、内も外も楽しめるとても素敵な本です